1979年生 ● 王子シューレ ● 国連職員 ● 不登校=中2〜 ● シューレ在籍=中2〜高2
好きなことを好きなだけ追及し、極める姿勢
自分のペースで悩み、学び、好きなことを自信もって追及できたことで、得意分野を伸ばし、専門性を身に着けられ、自分の希望する職場で働くことができています。
いじめの一番ひどい時期は幻覚が見え、幻聴が聞こえるくらい精神的に辛かったのを覚えています。シューレに通い始めて最初の数か月は心身ともに疲れており、ほとんど勉強せず、友達と話したり、ぶらぶらしたり、部屋の隅で泣いてスタッフの皆さんに相談をしたりする日々が続きました。
しかし、シューレで好きなことを追及している個性的な友人たちに会って、たくさんの刺激を受けました。また、スタッフの皆さんにありのままの自分をとことん受けとめてもらえました。結果、だんだん元気が回復してきて、好きだった英語の勉強から再開し、高校受験の勉強もできました。
困難に向かう強さ
人はだれも、「何の規制もなく、自由にゆっくりしたい」「自分探しをしたい」と思う時期があるように思います。それが人によってタイミングが違うようで、大学生の時の人もいれば、就職した後の人もいれば、退職した後のこともあるように思います。たとえば、いわゆる「エリート」としてわき目もふらず出世の道を走ってきて、大人になってから心身を病んでしまう人もいます(それはそれで必要な時期なのですが)。
私の場合は、それが中学2年からの数年間だったのです。あのとき、自分のペースで悩んで、自分がやりたいことをとことん考え、シューレに受けとめられたことで、その欲求は満たされ、気が済んだのだと思います。現に、大学(院)入学や就職後、残業に勉強に育児にものすごく忙しい生活を送っていますが、逆にゆっくり自由にできる状況にあるのに、特にそうしたいという欲求も出てきません。
しかし、もしあそこでシューレに出会わなければ、そして学校に行くことを強制されたならば、私は壊れていたかもしれません。そして何度も学校に行くことを促されたならば、「ゆっくりした」という満足感も得られなかったでしょう。もちろん、今もっている自己肯定感も馬力も生まれなかったでしょう。
また、私は、大学入試の直前という最悪のタイミングで父が自殺するという経験もしましたが、シューレの皆さんにとことん受け止められた経験、いじめを乗り越えた強さをすでに持っていたので、どん底から再度、立ち直ることができました。
自律(立)と自学自習
シューレと通信制高校に通ったことで、自分を律して学ぶということができました。大学や大学院の受験、法律や語学の試験勉強は、予備校にも通いましたが、主に自学自習でした(高校の時の苦手科目は東京シューレのスタッフの皆さんに教えてもらっていました)。
弱者へ寄り添う気持ち
自分もいじめを受けた経験から、異なるものを抱えていることで排斥や迫害される人々の気持ちが少しでもわかるように思います。私はシューレのスタッフの皆さんに寄り添ってもらいいじめから立ち直りました。だからこそ、難民や無国籍者等マイノリティーの人々の支援がしたいと思い、今に至ります。
経歴……中学2年の12月から不登校、3月から高校2年の3月まで王子シューレに在籍。並行して、公立中学卒業後新宿山吹高校通信制課程に入学。その後法政大学に進学(1998年)、カリフォルニア大学デイビス校に交換留学(女性学・移民学)。法政大学卒業後(02年)、米コロンビア大学国際公共政策学大学院に進学(人権専攻)、04年修士号取得。国連人口基金(UNFPA)シエラレオネ事務所でのインターンや難民支援NGOでの勤務等を経て、04年から国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所にて法務アソシエイトとして日本の難民受け入れや無国籍者のために働く。レバノン(准第三国定住官)、パキスタン(法務官)等でも勤務。難民の研究誌等に報告論文も数本発表。大学や省庁向けの講義等も多く行う。15年現在は育児休暇中。
注:当インタビューで表明されている考えは本人のものであり、所属先の見解では必ずしもありません。