1992年生 ● ホームシューレ ● 大学生 ● 不登校=小5〜 ● シューレ在籍= 13歳(中1)〜16歳(高1)
勉強って何のためにするんだろう
現在、千葉工業大学の4年生で、ロボットに関する研究をしています。就職活動中でもあります。
不登校したきっかけは、「勉強って何のためにするんだろう」と思ったのが始まりだったと思います。勉強するためだけなら学校って要らないんじゃないかな、と思って、違和感を感じるようになったんです。小5から断続的に不登校していたんですが、中学に進学して、1学期前半で完全に行かなくなりました。
家で過ごしている間は、パソコンでいろいろやったり、専門チャンネルでアニメを見たりしていました。特に『攻殻機動隊』という近未来を描いたSFの作品が好きでした。他に、ゲームやプラモデル作りも好きで、壊れた飛行機のラジコンをもとに新たにラジコンを作ったり、ジオラマみたいな物を作ったりもしました。作ることが好きでしたね。
中3の時、漠然と「このままでいいのかな」と思っていた頃、当時の担任の美術の先生が都立工芸高校を勧めてくれ、マシンクラフト科の定時制に入りました。友達もでき、楽しかったです。最終的には皆勤賞でした。
マシンクラフト科は、一般の工業高校の機械科とはまた違って、一点ものの工芸品を作るんです。コーヒーミルを一から作って、蓋のデザインをしたり、といって、金属を叩いて変形させ、ガスで溶接して、ペーパーナイフや壁掛けフックを作ったりもしました。材料は金属がメインです。
4年生になって、やりたいことが見えてきて、大学に進もうかなと思うようになりました。進路の相談によく乗ってくれていた先生に、「ロボットがやりたいんだったら」と今の大学を教えてもらって、工学部の未来ロボティクス科のAO入試を受け、合格しました。
「転ばないロボット」の研究
大学に入ってからは勉強が大変で、数学の授業の板書が英語だったり、週3回の課題も英語で書かなければいけなくて、1年生の前期は勉強しっぱなしでした。ただ、8人で1班になり、チームで勉強するようになっていたので、勉強が得意な人に勉強を教えてもらい、代わりに自分は機械に強かったので、それをみんなに教えたりすることで乗り切れました。
4年生になって、自分の研究に専念すると同時に就活もあるので大変です。研究テーマは、4本脚のロボットが歩く時に転ばないよう、1本脚を上げた時、地面に着いている3本脚の内側に重心を置くため、慣性ロータという地球ゴマのようなものを使えば重心位置を変えられるのでは、というような内容です。
もともと、不登校時代にハマった『攻殻機動隊』に出て来るようなロボットを作りたいと思ってこの大学に入ったんですが、大学の研究は好きなものだけを作ったらいいわけじゃないし、新規性とか、意味を持たなければいけないので、いかに付加価値をつけるかを考えました。それで過去に発表されたロボットの映像をいろいろ見ているうちに、「ロボットって転ぶな」と気付いたんです。
それで先輩方と相談して、「転ぶのは地面に着いている3点から重心が外に出てしまうからだ。重心を内側に入れてしまえばいいんだ」と考える中で、テーマを決めました。
人との出会いが道をつくってくれた
ロボットを勉強してみて、仕事としてロボットを作る人になるのは、現実的には難しいなと思いました。
まだ発展性のある分野なので、一部の大手メーカーでないとその夢は叶えられないし、本当に限られた人たちが活躍している分野なんですね。それを実際にやるには能力不足ですし、ロボットはあくまで大学にいるうち、あとは趣味でやる範囲にしておこうと決めて、就活はおもちゃメーカー1本に絞りました。
大きかったのは、人との出会いです。学校にずっと行っていたら、今みたいに自分のやりたいことをメインに勉強できていたのかな、と思います。選択肢が多すぎて選べなかったかもしれません。
いろんな人と出会って、方向性が今につながったし、「ここに進むしかない」と決められたので、迷いがなくなったのではないかと思います。